サカナクション「アルクアラウンド」が恋愛リアリティーショーの主題歌に選ばれた結果

2019年6月、6年ぶりとなるアルバムをリリースしたサカナクション。アルバム関連のプロモーションが続く中で、ある衝撃的なニュースが入ってきた。

インターネットテレビ局『AbemaTV』が、7月14日22時よりレギュラー放送を開始する、オリジナル恋愛リアリティーショー『オオカミちゃんには騙されない』。同番組の主題歌がサカナクションの「アルクアラウンド」に決定した。

 『オオカミちゃんには騙されない』は、真実の恋をしたい男女10人が、恋の駆け引きやデートを繰り返しながら、本気の恋に落ちていくまでを追いかける恋愛リアリティーショー。「オオカミ」シリーズは、2017年2月の「オオカミくんには騙されない?」以降、今作で6作目となり、全シリーズ累計視聴数が1億を突破する圧倒的人気シリーズとなっているほか、月刊漫画雑誌『別冊フレンド』にてオリジナル版連載、ファッションブランドとのコラボレーション商品の販売など多岐にわたる展開を行い、女子中高生だけでなく20代女性たちからも支持を得る番組へと成長している。

 今回の『オオカミちゃんには騙されない』では、これまでとは真逆の設定で、女性の中に”オオカミちゃん“が最低1人混ざっているという、史上初の座組みでの放送となる。サカナクションによる主題歌「アルクアラウンド」は、本番組での”オオカミちゃん”に惑わされ揺れ動く出演者の繊細な感情と非常にリンクしており、ノスタルジックな世界観が新しい「オオカミ」シリーズを彩っているとのことから、起用が決定したという。

https://realsound.jp/tech/2019/07/post-385590.html

思わずニュース記事を二度見した。

サカナクションが?ネット局の恋愛リアリティーの?主題歌?しかも10年も前の曲、アルクアラウンド???

これまで多くの楽曲でタイアップを務めてきたサカナクションだったが、最もよく分からない組み合わせだった。自分がそういう番組を見ないからなおさら。


タイアップというものは、作品と楽曲のイメージがどのように結びつくか、という点が重要である。こんな今どきの恋愛リアリティーショーが、10年前の、しかも(個人的に)恋愛のイメージがないこの曲が合うのか…?とサカナクションのファンとして(お節介な)心配をしていたが、よく考えてみれば過去にも「蓮の花」が映画『近キョリ恋愛』の主題歌に選ばれたりしていたので、まぁ大人の事情でそんなこともあるか、と自分の中で落ち着いた(「蓮の花」は恋愛成分強めの曲だとは思うが)。

 

 

うーん、でもやっぱりもやもやするなぁ。

 

 

それから数ヶ月が経って、バイト先の飲み会。後輩たちとの会話で、サカナクションについての話になった。僕がサカナクションファンであることはバイト先では周知のことだが、別に普段から音楽の話をするという感じではない。大体こういう場でのサカナクションの話題といえば、『Twitterで「新宝島」の音ハメ動画見たことあります』とかそこら辺。

ただこの日は違った。


『この前アルクアラウンドって曲聞いたんですけど、あれ良い曲ですね!』


うんうん……?えっ?

思わず二度見、ならぬ二度聞きした。

なぜアルクアラウンド?


『オオカミちゃん見てたら流れてたんですよ〜。あの曲、めっちゃ合ってるな〜って!』


『あ、オレも見た!あのシーンとか、ちょうど良いタイミングでイントロ流れてきて鳥肌立ったわ〜!』

と他の後輩も続く。


おいおいタイアップすげえなぁ。今まであまりサカナクション聞いてこなかった層にもちゃんと届いてるやん…

思わず嬉しくなった僕は『アルクアラウンドって実は10年前の曲で、kikUUikiっていうアルバムに入ってるから良かったら通して聞いてみてね〜』と流れるように一通りの布教活動を行った。


たまたま自分の後輩たちが見ていただけかも知れない、と思っていざYouTubeを開きアルクアラウンドのMVのコメント欄を久しぶりに覗いてみると、ここ数日中に書き込まれた、しかも文面を見るだけで分かるほど初々しいコメントが並んでいた。『オオカミちゃんからきたけど、これ昔の曲なんだね』的なコメントがずらり。違和感もあるが、正直感動した。


その後に彼らがサカナクションの他の曲を聞くようになるかは分からない。だが少なくとも「アルクアラウンド」という一曲がサカナクションの曲としてインプットされた訳で(面白いことに、それも恋愛ソングとして)、この事実は意外と大きいのではと思った。というのも、そのようにインプットされた曲が、新たな出会いの“きっかけ”となりうるから。


思えば、いま自分が敬愛してやまないトーフさん(tofubeats)のことを知ったのは、パスピエBase Ball Bearの対バンというゴリゴリのロックイベントにゲストDJとして彼が呼ばれていたことがきっかけだったし、いま自分にとってのロールモデルであるアリムラさん(in the blue shirt)のことを知ったのは、トーフさんのYouTubeチャンネルでの企画に彼が出演していたことがきっかけだった。いま自分が好きな人やものが、自分の中で定着してから振り返ってみると入り口は意外なところからだったりするのである。


もしかしたら、アルクアラウンドのコメント欄に初々しいコメントを残している人たちも、せっかくだからと関連動画からサカナクションの他の(しかもわりと過去の)曲を聞いてサカナクションにハマるかも知れないし、はたまたそこからさらに他のバンドにハマるかも知れない。


ひとつのミュージシャンに入っていく入り口は、別にひとつだけではない。そしてこれはミュージシャンに限った話でもない。

偶発的かつ不思議な組み合わせが、新しい音や人との出会いに繋がる。そう考えると、日々の友達との会話から、はたまた自宅でゴロゴロしながらするネットサーフィンまでもが楽しくて仕方がない。

 


あのときの”もやもや”はすっかり消え去っていた。